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二次創作およびオリジナル小説(幕末~太平洋戦争と、ロマンス)や、歴史に関することなどのブログ
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「どうだい。ピエール。この話、どう思う?」
金髪碧眼のいかにも貴族的な顔立ちの青年が声をかけた。
「そうだなあ。」
ピエールと呼ばれた青年は、ソファーから起きあがると、部屋を歩き出した。部屋といってもかなり広く、ホールといってもいいそこには肖像画が何枚も掲げられていた。その肖像画を見ながら、ピエールは、少し考えていたようだが、おもむろに口を開いた。
 

「甘ったるいな。変に史実っぽいところが中途半端だ。それに、ミスマッチだし、悪いけど、ルドルフ。これ、受けないよ。」栗色の目がいたずらっぽく光った。
「どうしてさ。」金髪碧眼の青年は憮然としている。
「お前の処女作、けなして悪いけど、率直に言えっていったのそっちだからなあ。」ピエールは栗色の髪をかき上げた。
「だって、史実に基づいてんだぜ。このゴートベルグ城の」
「お前のご先祖様の話なら、何もよりによって、ヘルマン一世剛胆公の恋物語なんて書かなくてもいいじゃないか。他にいくらでもあるだろう?若き日の公の武勇伝とか、セシリア・ヴァルバラ姫と組んだ権謀術策の数々とか」ピエールはずけずけと言った。
「だ~め、そんな話なら何世紀も前から書かれてるよ。だから、この意表をついた話がいいんじゃないか。中世騎士物語だよ。ロマンス小説じゃないか。」
「お前ねえ、騎士物語にはパターンがあるだろう。パターンが。」ピエールはつづけた。
「年の離れた王様と若くて綺麗な王妃様、その王妃様を慕う若い騎士。トリスタンとイゾルデみたいなお話と決まってるでしょうが。それをこの、」ピエールは1枚の肖像画を指さした。黒い鎧に身を包んだ壮年の武人の姿が描かれている。
「ヘルマン一世と」さらにその隣の絵を指さした。
「この少女のような姫君との恋だなんて。確かに綺麗な姫君だけど、あの公とねえ。」
ピエールは笑い出した。
「だめかなあ。」ルドルフは頭を抱えている。ピエールは気の毒になったのか、こう付け加えた。
「もっと濃厚なラヴシーンをたっぷり書くんだよ。それならうけるよ。」
「僕はポルノを書きたいんじゃない。」ルドルフはいよいよふくれっ面になった。
「でも、ヘルマン一世とこの姫君もどう思ってるだろうね。直系の子孫が自分達のことを書こうとしてるなんて知ったら。」
「僕は、ヘルマン一世の直系じゃないよ。」
「だって、君はゴートベルグ大公家の直系で、ここゴートベルグ城のご当主様じゃないか。」
「ヘルマン一世に子供はいなかった。甥のカール王子を跡継ぎにしてセシリア・ヴァルバラ姫の従姉妹にあたるヴェルツェン侯爵家のアンヌ・マリーエ姫と結婚させた。その長男がカール・シュテファン一世、僕の直系のご先祖様なんだ。」ルドルフは説明した。
「カール王子は?」
「彼も25ぐらいで亡くなってるよ。まあ、そのあいだに、アンヌ・マリーエ姫との間に十人も子供を作っているから、まあ、領主のつとめは果たしたことにはなるんだけどね。」
「ふーん、じゃあヘルマン一世っていくつまで生きてたんだい?」
「八十五かな。」
「その当時にしたらずいぶん長生きじゃないか。」ピエールは目を丸くした。
「そう、丈夫で長生きだったってだけでも名君だったんだ。領主が死ねば、必ず戦争になって領民はひどい目に遭うからね。ヘルマン一世はカール・シュテファン一世が成人するまで生きていてくれたんだ。」
「じゃあ、この綺麗なお姫様も、お婆ちゃんか。」
「マルガレーテ姫は若くして死んだ。」ルドルフはぽつんと言った。
「佳人薄命か・・・病気で死んだのかい?」
「よくわからないんだ。船が遭難したらしい。」
「何で船に乗ったんだろう?」
「さあなあ。」
「もしかして、駆け落ち?それで、剛胆公が怒って姫を殺したとか?」ピエールがふざけていった。
「止めろ!そんなこというの!」ルドルフは怒り出した。
「悪かったよ、何てったって、ここじゃあ、英雄だもんなあ。ヘルマン剛胆公は。」
「でるんだよ、この城、剛胆公の幽霊が。」ルドルフは声を潜めた。
「まさか。」
「あの肖像、そのままの姿で、マルガレーテ姫の肖像画の前に立ってるんだ。僕も小さいころ見たことがあるんだよ。」
ピエールは、一笑に付そうとして、ヘルマン一世の肖像画を見た。射すくめられるような鋭い眼光に、彼はぞっとした。
「あんまり、公の悪口を言うと、夜中、首絞められるかも知れないぜ。」ルドルフは真顔でいった。
「とにかく、公はマルガレーテ姫が亡くなってから四十年近く、ずっと独身を通したんだ。」
「それで、公の純愛物語を?でもそれだけじゃ、」
「客観的証拠に欠けるって、言いたいんだろう?ピエール。ちょっと手伝ってくれ。」
「何をするんだい?ルドルフ。」
「マルガレーテ姫の肖像画をはずすんだ。」
「雑に扱って平気なのか。これ板絵だろう?」
「だから、ピエール、お前に頼むんだ。考古学専門だろう。それに傷でも付けたら。」
「それこそ、剛胆公に祟られるな。」
二人はそっと、肖像画をはずした。ルドルフが言った。
「この絵の裏を見てみろよ。古語だけど読めるだろう。」
「ああ、え~っと。我が・・最・・愛の・・人・・マルガレーテ・・」ピエールは読み上げた。
「剛胆公の直筆だ。筆跡鑑定もした。鑑定したら、もっと面白いことが解った。」
「どんなことだい?」
「まず、絵を戻そう。」二人は肖像画をヘルマン一世の絵の隣に戻した。
「面白いことって?」ピエールが尋ねた。
「あの筆跡は少なくとも、剛胆公が六十歳過ぎてから書かれたらしいってことさ。」
「そんなことまで解るのか?」ピエールは疑わしげに言った。
「公の署名や文書は年代ごとに城に保管してある。若い頃と老年では筆跡も違う。この筆跡は、公が七十ぐらいの頃書いたものとよく似ているんだ。多分、そのぐらいの時、この絵に書いたんだろう。ヘルマン一世は、何十年たっても、このマルガレーテ姫のことが忘れられなかったんだ。きっと、そうさ。」
そういうと、ルドルフ・ゴートベルグは、その貴婦人の肖像画に見入っていた。
 
 
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