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私が小学生だった頃、漫画ではよく太平洋戦争の話が載っていました。というよりストーリーの余り無かったあのころの漫画で一番印象に残っているのが、楳図一雄の恐怖漫画と戦争物だったのかも知れません。
戦記物のようなカッコいい戦闘場面はなく、東京大空襲・原爆(戦後20年以上もたって白血病で死んでいく話)・特攻隊の悲劇など、銃後の哀しみを扱ったものが多かったのです。
そんなある日、友達の家で月刊誌の付録の漫画を手に取りました。題名は、確か花子よ永遠にというもので、女学生と象の絵が描いてありました。何の気なしに読み始めた私はあまりの内容に呆然とするばかりだったのです。
太平洋戦争末期、空襲で動物園の猛獣が逃げることを畏れた軍部は、上野動物園のゾウやライオンたちを始末することを飼育係達に要求する。毒の入ったえさを食べて死んでいくライオンたち、その檻に取りすがり号泣する若い飼育員(ここの場面は非常にリアルに、そして残酷に描かれていました)。
次はゾウの花子の番、しかし、花子は匂いがわかるので毒の入ったえさを食べない、餓死させよう。主人公の女学生(上野動物園のすぐそばに住んでいた)は動物園の異変に気づき、なんとか花子を助けようとエサをこっそり運びます。老飼育員もやはりエサを運んでいました。陸軍将校に見つかってしまう二人、花子は射殺されてしまいます(実際は餓死したのですが)。花子に取りすがって泣く二人に、将校は捨てぜりふをはく。「たかが獣ではないか!」。
この話の途中で女学生の父親がインパール作戦で餓死したと知らせが入るのです。確か見開きでジャングルの中朽ち果てていく兵士の姿がありました。
今考えるとよくこんな話を漫画にできたと思います。
実際に起きた上野動物園の事件、その当時私は何も知りませんでした。あのころ(40年近く前)の子供達にとって上野動物園に遊びに行くことは大変な楽しみだったのです。その動物たちが昔、そんなひどい目に遭わされた。許せない。でもどうしようもない。自分が生まれるはるか以前のことだから。予備知識もなくこんな話読んだのですから、私は混乱し涙も出ませんでした。そして、不思議なことにこの話を長い間忘れていたのです。
この話の中で、子供たちは、戦記物とは違う戦争の惨さを知ってしまい、知らなければ良かった、見なければ良かったと思うのですが、これは、ゾウの花子の話を知ってしまった、その当時の私の感情でもあります。
私は、太平洋戦争については、学校で習った概略以外は殆ど知りません。
親は戦争の話題を口にすることさえ嫌い、NHKの戦争のドキュメンタリーさえもろくに見せてもらえなかったのです。また、学校の先生達も殆ど話してはくれませんでした。
かろうじて大人から聞いたことのあるのは
「空の要塞B29という爆撃機がきた」
「グラマンに機銃掃射を掛けられた。」
「隣のおじさんはシベリア抑留されていた。」
「大空襲の時、東京の空が真っ赤だった。おじいさんが大震災の時と同じだ。東京はお終いだといった。」
といった断片的なものでした。
そんな中でまとまりのある話として私に戦争を伝えてくれたのは、銃後の哀しみを描いた少女漫画だけだったのです。
ですから私の戦争の知識は、かなり偏ったものとなってしまいました。
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太平洋戦争関係の二次創作&オリジナル小説を書いています。
また、中世~近現代のロマンス小説も書きます。